解雇、内定取消し

人員削減の必要性-整理解雇の4要素(4要件)

整理解雇、人員削減の必要性

この記事では、整理解雇の有効性の判断要素である人員削減の必要性について、弁護士が解説をしています。

必要性の考え方、判断要素

原則として高度な必要性が求められる

整理解雇を適法に行うためには、人員削減の必要性が認められることが必要です。必要性が認められなければ、いわゆる4要素説を採ってもまず無効になります。

そして、この必要性は、原則として、高度な必要性が認められなければなりません。

必要性の判断基準時

必要性の判断については、原則として解雇時点で必要性を判断することになります。

解雇回避努力義務との関係

人員削減の必要性の要素(要件)は解雇回避努力義務の要素(要件)との関係性が強く、人員削減の必要性が低い場合には、解雇回避努力義務の要素について厳格に判断される傾向があります(トプコン事件、東京地判平成28年8月9日)。

トプコン事件(東京地判平成28年8月9日)

「人員削減の必要性が高度に、または十分に存在することを要すると解すべきであり、人員削減の必要性が前記水準まで達していない場合には、他の要件について高度の充足性が求められるものと解するのが相当であるところ、前述のとおり、本件解雇について人員削減の必要性が高度に、または十分に存在するとまで認めることはできないから、本件においては、それに応じた十分な解雇回避努力等が求められる。」

人員削減の必要性に関する裁判例

泉州学園事件(大阪高判平成23年7月15日、労判1035号124頁)

本事例は、学校法人の整理解雇の削減人数の算出において、単年度の予算上の消費支出超過額を、専任教員1人当たりの平均給与等で除して削減人数を算出するという方法について、単純にすぎ、一般的には直ちに合理性があるとすることはできないとした。

また、「人件費削減の方法として、人件費の高い労働者を整理解雇するとともに、他方では人件費の安いほぼ同数の労働者を新規に雇用し、これによって人件費を削減することは、原則として許されないというべきである。なぜならば、同程度の人件費の削減を実現するのであれば、人の入れ替えの場合よりも少ない人数の整理解雇で足りると解されるし、また、このような人を入れ替える整理解雇を認めるときは、賃金引き下げに容易に応じない労働者の解雇を容認し、その結果として労働者に対し賃金引き下げを強制するなどその正当な権利を不当に侵害することになるおそれがあるからである。」として、安い労働力への入れ替え目的での人員削減の必要性を否定した。

学校法人大乗淑徳学園(大学教授ら・解雇)事件(東京地判令和元年5月23日、労判1202号21頁)

本事例は、大学を運営する学校法人における廃止する学部の教員の整理解雇について、学部の廃止の経営判断の合理性は認めつつも、金融資産が豊富で、黒字経営でキャッシュフローも良好であったことなどから、経営危機に陥るといった事態は想定し難く、教員らは他学部の授業を担当可能であったとして、人員削減の必要性が高度であったとはいえないとした。

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属)

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