この記事では、会社(使用者)が解雇できる条件について弁護士が解説をしています。
解雇の種類-懲戒解雇、整理解雇、普通解雇
解雇は、使用者からの一方的な意思表示により、労働契約を終了させるものです。解雇の種類としては、おおまかに分類すると普通解雇、整理解雇、懲戒解雇があります。
懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇です。認められる要件が非常に厳格で通常あまり行われていません。
整理解雇は、使用者側、経営状況の悪化を理由に行われる解雇で、いわゆるリストラの一種です。
普通解雇は、懲戒解雇ではない解雇で、整理解雇とは区別し、主に労働者側に帰責事由がある場合の解雇をいいます。
解雇権濫用法理による解雇の制限
民法の原則と判例法理の確立
民法上は、期間の定めのない労働契約は、労働者、使用者いずれからでも二週間前に解約を申入れすることによって解除が可能です(民法627条)。
しかしながら、判例上、使用者の使用者側からの解除、すなわち解雇に対しては制限がされるのが確立され、労働契約法上も判例法理であった解雇権濫用法理が規定されることになりました。
解雇権濫用法理の内容
労働契約法16条では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています。
すなわち使用者側が解雇をするには、以下の2つの要件が認められなければなりません。裁判では、この要件の立証責任は使用者側に課せられています。
- 解雇が客観的に合理的な理由があること
- 解雇が社会通念上相当であること
客観的合理的理由
客観的合理的理由が認められるには、就業規則の解雇事由に該当することが必要になります。
社会的相当性
社会通念上の相当性が認められるかは、解雇事由の重大性、労働者の情状、解雇回避手段の有無、他の労働者の処分との均衡、解雇手続等から判断されます。
整理解雇の要件
整理解雇は、労働者の側に帰責性がない場合の解雇ですので、判例上、上記の解雇権濫用法理の判断において、以下の4要素(4要件)が考慮されます。
- 人員削減の必要性
- 解雇回避努力義務
- 人選の合理性
- 手続の相当性
人員削減の必要性
人員削減の必要性の要素は比較的厳格に必要性を考慮されており、整理解雇をしなければ倒産必然といった状況までは不要ですが、会社の経営上、人員削減の高度な必要性が求められます。
解雇回避努力義務
使用者が整理解雇をとるまえに、解雇を回避するための努力をしていて、解雇が最終手段といえるかが考慮されます。
解雇回避努力義務を尽くしたといえるかは、経費削減等の経営努力、希望退職者の募集等の有無等が考慮されます。
人選の合理性
人選は、客観的に合理的な基準により構成に行われる必要があります。
手続の相当性
使用者は、労働者に対し、整理解雇について誠実に協議・説明を尽くす必要があります。
懲戒解雇の要件
懲戒解雇は、懲戒処分の一種ですので懲戒処分の要件をみたす必要があります。
就業規則の規定と周知
懲戒解雇を行うには、就業規則に懲戒事由と懲戒解雇について定めがある必要があります(フジ興産事件、最判平成15年10月10日、労判861号5頁)。
就業規則がなかったり、周知がされていない場合はそもそも懲戒解雇ができないので注意が必要です。
弁明の機会を与えることが必要
懲戒解雇においては、客観的合理的理由と社会的相当性が認められることに加え、就業規則等における手続がきちんと履践されているかが厳しくみられます。
特に労働者に弁明の機会を与えることが重要で、仮に就業規則に弁明の機会の付与について規定がなくても、弁明の機会を与えることが必須です。