労働条件

作業着・制服等への着替え時間は労働時間?給与の支払いは必要?

着替え時間は労働時間か

この記事では着替え時間の労働時間該当性について、弁護士が解説をしています。

着替えなんて始業開始前にするものだからその時間に給与は支払われないんじゃないですか?
そう思っている人は多いですね。でも、給与が支払われるかどうかは、その時間が労基法上の労働時間に該当するといえるかで判断するんですよ。

労働基準法上の労働時間とは

労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に従って労務を提供する時間を指すとするのが判例・通説的見解です(指揮命令下説)。

労働時間に関する判例としては三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件が有名です。

三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件(最判平成12年3月9日、労判778号11頁)

労働基準法32条の労働時間(以下「労働基準法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される。

着替え時間は労働時間に該当するか?

労働時間該当性判断のポイント

着替え時間が労働時間といえるかは、指揮命令下に置かれているといえるかで決まるわけですね。

指揮命令下説からは、作業服・制服への着替えが、本来の業務に関連しかつ必要不可欠な行為で使用者に着替えを義務付けられているといえるか、事業所内の所定の場所において行うものとされている場合は、使用者の指揮命令下におかれているといえ、労基法上の労働時間に該当すると解されます。

労働時間該当性判断のポイント

  • 着替えが本来の業務に関連しかつ必要不可欠な行為で、使用者に着替えを義務付けられているといえるか
  • 着替えが事業所内の所定の場所において行うものとされているか

着替え時間に関する裁判例

さきほどご紹介した三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件では、作業服及び保護具等の装着のための時間は労基法上の労働時間に該当するとされています。

三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件(最判平成12年3月9日、労判778号11頁)

「右事実関係によれば、被上告人らは、上告人から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、また、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたというのであるから、右装着及び更衣所等から準備体操場までの移動は、上告人の指揮命令下に置かれたものと評価することができる。また、被上告人らの副資材等の受出し及び散水も同様である。さらに、被上告人らは、実作業の終了後も、更衣所等において作業服及び保護具等の脱離等を終えるまでは、いまだ上告人の指揮命令下に置かれているものと評価することができる。」

指揮命令下説からだと作業服や制服を会社で着替える場合は、ほとんど労働時間に該当して、給与が支払われることになりそうですね。私も明日から事務所で着替えることにしてもいいですか?
うちは制服はないし、スーツに着替えるといったものではだめですよ。
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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属)

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