退職代行業者を使った退職が流行っていますが、会社を辞めるのは実はとても簡単です。
退職代行業者を勧める人たちはメリットばかり強調しますが、利用にあたってはデメリットもきちんと認識しておく必要があります。
この記事では、退職代行を利用するデメリットと退職代行に頼らず自力で会社を辞める方法について弁護士が解説をしています。
退職代行業者を使った際のデメリット
退職代行業者を使った際のデメリットを説明します。
- 社会的信用が下がる可能性がある
- 会社が強行な対応をしてく可能性がある
- お金がかかる
社会的信用が下がる可能性がある
退職代行業者を利用して会社を辞める人はまだまだ圧倒的少数派です。
従業員が辞めること自体は会社ではまったく珍しいことではありませんが、退職代行を利用して会社を辞めるという行為はとても珍しい行為なので、社内で注目を浴びることは間違いありません。
現在の世間の風潮としては、退職代行の利用をよい風に解釈されることはまずなく、基本的には「変わった人だなぁ。」という評価を受けることが多いでしょう。
世間は狭いので、いつどこでその情報が出回るかも分かりません。
会社が強行な対応をしてくる可能性がある
非弁護士による退職代行は弁護士法違反の非弁行為だという見解があります。
そのため、退職代行業者から連絡があった場合、非弁行為であるから有効な退職の意思表示としては扱わず、その旨退職代行業者と本人に通知するといった対応をすることが指摘されています(会社法務A2Z、2019年5月号25頁)
退職の意思表示を有効に扱わないとすると、退職代行を利用した従業員は無断欠勤が続くことになり、懲戒解雇等の処分の対象となるおそれがあります。
筆者としては、会社がそのような強行的な対応をすることは推奨しませんが、会社が強行的な対応をしてくることはあり得るでしょう。
お金がかかる
退職代行の相場は2~5万円程度です。
退職代行を利用せずに自分で退職すれば、もちろんお金はかかりません。
退職代行を利用せず自力で会社を退職する方法
それでは退職代行を利用せず自力で会社を退職する方法について解説します。
退職代行業者は電話してくれるだけ
会社を退職するにあたって主に必要な行為は次のとおりです。
- 退職届を提出する
- 健康保険証等、会社からの貸与品を返却する
- 会社内の私物を引き取る
- 必要に応じて業務の引継ぎをする
- 離職票、源泉徴収票、健康保険資格喪失証明書等を受け取る
辞める上で最も重要なのは退職届の提出です。
退職代行業者が行う業務は基本的に「辞める」ということを会社に電話で伝えることです。
退職届を提出したり、貸与品の返却、私物の引き取り、業務の引継ぎ、社会保険等の手続きは結局自分でやらなければなりません。
直接「辞める」というのが言いにくいだけであれば、メールや手紙で伝えれば結論は同じです。
会社を辞める手順
会社を辞める手順は次のとおりです。
- 就業規則の退職手続を確認する
- 退職を伝える、退職届を提出する
- 会社の指示に従って書類等の授受を行う
1.就業規則の退職手続を確認する
就業規則には、退職の手続について規定がされています。
できる限り、そちらを確認しておくべきです。確認するポイントは、退職予定日の何日前までに辞めるかを伝えなければならないかというところです。
無期契約で法律通りであれば2週間前ですが、1ヶ月前などとしている企業もあります。
もっとも、円満な退職でなくてもよいならこちらは飛ばしてかまいません。
2.退職を伝える、退職届を提出する
会社は所定の退職届を用意しているので、基本的にはそちらを使います。
会社に直接口頭で退職を伝えたくない場合は、メールで退職の意思を伝え、退職届をFAXまたは郵送するといった方法をとるしかありません。
所定の退職届が手に入らない場合は以下のような内容でかまいません。退職理由の記載も不要です。
年 月 日
退職届
○○株式会社 御中
○○株式会社
△△課 〇〇△△ ㊞
冠省 私は、 年 月 日をもって、貴社を退職いたします。
今後のやり取りについては、郵送(住所: )またはメール(xxxxx@oooo.jp)にてお願いいたします。
草々
3.会社の指示に従って書類等の授受を行う
退職届提出後は、その後の手続きについて会社から指示があります。
直接口頭や電話でのやり取りをしたくない場合は、郵送またはメール等で行うようお願いしておきましょう。
まっとうな会社であれば、その後の手続きもしっかり処理してくれます。しないと会社にとしても困るからです。
会社が離職票を発行してくれない場合は、ハローワークに相談してください。
退職日をどう設定するか
退職届を出すにあたって、問題となりうるのが退職日と退職日までの過ごし方です。
まっとうに辞めるのであれば、会社と相談して決めることになりますが、ある程度荒っぽい辞め方をするのであれば、
退職届提出日の2週間後に退職予定日を設定し、残りは有給消化または欠勤
することになります。
ただし、有給は3日前までに申告するなどの規定が就業規則にあったりすると、一部有給の行使が認められない場合もあります。この場合は有給行使が認められない部分は欠勤扱いとなります。
また、欠勤に対しては、無断欠勤扱いされ、懲戒処分がなされるリスクがありますが、これは退職代行を使っても同じことです。
会社としては退職代行を使われる方が厄介、バックレはもっと厄介
会社からすると、退職代行業者を使われる方が通常の退職手続より厄介だったりします。とりわけ弁護士ではない退職代行業者を使われると厄介です。
退職代行業者を使われた際に、会社として何が厄介かというと、「退職代行は非弁行為だから意思表示は無効である。」となったりしないか、本人が後から「やっぱり辞めたくない。」とか「辞めるつもりはなかった。」とか言ってこないかというのを心配しなければならない点です。
会社としては、上記のリスクを避けるために、退職代行業者を使われた際は本人の意思確認が重要になります。退職代行業者が会社から本人への意思確認のための連絡を止めることはできません。
- 本当に本人が辞める気があるのか不安
- 退職の意思表示が非弁行為として無効になるかもしれないという不安が
会社側が最も厄介なのは、いわゆるバックレをされて、連絡が一切取れなくなることです。