ハラスメント

パワハラの裁判で認められる慰謝料、認容額帯ごとに裁判例を紹介

パワハラ、慰謝料、相場

この記事では、パワハラの慰謝料の相場感を知りたいという人のために、パワハラの慰謝料が請求された裁判例を紹介していきます(日々更新予定)。

各表の(   )内の額は、休業損害、弁護士費用、未払賃金等を含む認容された損害等の総額です。

慰謝料~50万円以内、被害が軽微なパワハラ事件としては相場

行き過ぎた指導や罵倒などで、被害者に病気の発症や休職、キャリア形成上の大きな支障が生じていない場合のパワハラで認められる慰謝料は50万円以内のものが多数です。

また、そもそもパワハラが認められず慰謝料が認められていない事例が多数ある点にも留意が必要です。

慰謝料認容額 事案の概要
5万円(6万円) 公立高校の教諭(原告)に対する指導改善研修期間中、研修担当者が、教諭の発言に対し声を荒げて謝罪を求めた事例(大阪地判令和元年5月27日)
10万円(203万6500円) 従業員が業務中に注意を受けた際に、後頭部を平手で1回叩かれ、他の従業員の前で、寄生虫と同視するような発言を受けた事例(東京地判平成30年8月15日)。その他逸失利益の損害と未払賃金の請求を認容。

慰謝料50万円超~100万円以内、パワハラの慰謝料としては高め

パワハラの程度としては、比較的強いものの精神疾患の発症までには至っていないものや精神疾患の発症に至っていても労働者自身にも既往症などが認められるものは、100万円程度の慰謝料が認められているものがあります。

慰謝料認容額 事案の概要
60万円(66万円) 採用後間もない労働者の性格や感覚等を批判し、職場から排除しようとした行為を違法な退職勧奨とした事例(公益財団法人後藤報恩会ほか事件、名古屋高判平成30年9月13日、労判1202号138頁)
70万円(77万円) 法科大学院の授業内容に問題があった教授に対する同僚教員からの人格攻撃を伴うメールや教授会での言動がなされた事例(高松高判平成31年4月19日、上告棄却、報道
70万円(127万1509円) 弁護士が秘書に対し、脱税行為への加担を強要した上、その後の対応や有給休暇取得を嫌悪し、業務指導の範囲を逸脱した叱責をしたり、一方的に労働条件を変更したり、業務上の必要性に基づかない業務命令を発したり、人格を否定するようなメールを送信するという嫌がらせを行った事例(東京地判平成30年3月26日)。弁護士は通称○○部屋で不要書類の廃棄についてはシュレッダーではなく手で破って行うことを指示した。未払賃金等についても認容。
100万円(110万円) 研修を受講しなかった大学医学部附属病院の助教に対し、人事権を有する教授により、手術場への出入り禁止命令や退職勧奨がなされ、助教より上位者の講師と教授により、出勤簿捺印拒否、職員録からの氏名の抹消、退職届願一式を送付するなどがされた事例(名古屋高判平成30年10月25日)。出入り禁止命令や退職勧奨の違法性は否定。一審報道
100万円(295万9251円) 保護者からの理不尽な謝罪要求に対し、校長から謝罪を強いられ、そのことが原因でうつ病を発症し、休業した小学校教諭に校長自ら電話をしたり、教諭に無断で担当医から病状を聞き出そうとしたり、教諭の公務災害認定請求に対して妨害的な対応をした事例(甲府市・山梨県(市立小学校教諭)事件、平成30年11月13日、労判1202号95頁)。その他治療費や休業損害等の損害を認定。
100万円(110万円) 業務の適正な範囲を超えた過重で強い精神的苦痛を与える業務に従事することになる配置換え指示を受けた従業員が自殺した事例(大津地判平成30年5月24日)。配置換え指示と自殺との因果関係は否定。

慰謝料100万円超~、精神疾患、休職、退職などを伴うパワハラ

うつ病等の精神疾患の発症、長期の休職、退職を引き起こすようなパワハラの慰謝料は100万円を超えるものがでてきます。

このような場合は、休業損害等の逸失利益なども発生することが多く、慰謝料以外の損害等を含めた総額がより高くなっています。また休業損害等の認定が困難なものについては、慰謝料にその点が加味されているものも見受けられます。

慰謝料認容額 事案の概要
150万円(165万円) 村長が、合意の下性的な関係にあった女性職員に対し、執拗にセクハラを含む女性職員を精神的に追い詰めるメールを送信等した事例(仙台地判、平成30年4月24日)。うつ病の発症、病気休暇や休職にいたったことが休業損害での認定ではなく慰謝料に一部考慮されている。報道
300万円(346万0230円) 組織的かつ継続的なパワハラによりうつ病を発症し、約2年半の休職を余儀なくされた事例(さいたま地判令和元年6月28日)。その他診断書代等の損害を認定。
300万円(1116万9214円) 従業員に対して「殺すぞ」といった恫喝を含む叱責を全員が聞くことのできるインカムや面前で繰り返していた班長の執拗な嫌がらせ、いじめによりうつ病を発症し約5年半の通院・自宅療養生活を余技なくされた事例(大阪高判平成31年1月31日)。就労不能とされている期間中に被害者が麻雀大会で優勝した事実を考慮しても、就労不能であるとして休業損害を認めた。
500万円(574万9023円) 退職勧奨に際し「ここでお前は嫌われている。誰も一緒に仕事をしたくない。他の仕事を探せ」等の名誉感情を害する言動や人間関係からの切り離しをしたり、管理職候補として採用された従業員に対し除草作業や掃除作業等を行わせたり、その他執拗なパワハラ行為を長期間繰り返し、従業員は適応障害を発症し、長期の休職を余儀なくされ退職に至った事例(山口地方裁判所周南支部判決平成30年5月28日)。その他治療費等の損害を認定。

 

 

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属)

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