懲戒処分

戒告とけん責の違い、懲戒処分

けん責、戒告

この記事では会社が行う懲戒処分の戒告とけん責について弁護士が解説をします。

懲戒処分の種類と重さ

就業規則に定められている懲戒処分のうち、戒告、けん責は最も軽い懲戒処分の一つです。

懲戒処分には、重いものから順に懲戒解雇、諭旨解雇、降格、出勤停止、減給、けん責、戒告とありますが、減給以上の懲戒処分は、一般に重い懲戒処分で有効性が認められるには従業員の非違行為がそれなりに重大である必要があります。

そのため、減給以上の懲戒処分はあまり行われず、会社で行われる懲戒処分としては、戒告、けん責が多くなります。

戒告とけん責の違い

戒告は口頭あるいは文書によって将来を戒めるものです。

他方で、けん責は口頭あるいは文書によって将来を戒めるものであり、一般に始末書の提出が要求されます。

わかりやすくいうとどちらもいわゆる注意ですが、始末書の提出を求められるか否かが違いとなっています。

実際には、就業規則上あまり戒告とけん責の違いを意識せずに定義づけられているものもあり、その場合は、基本的には就業規則上の定義で意味を判断することになります。

戒告、けん責を行うための要件

戒告、けん責を行うためには以下の要件をみたす必要があります。

  • 就業規則において懲戒事由と戒告、けん責をできることが定められ、周知されていること
  • 戒告、けん責処分に客観的合理的理由と社会的相当性が認められること
  • 懲戒処分の手続を履践していること

就業規則において懲戒事由と戒告、けん責をできることが定められ、周知されていること

懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒事由と懲戒の種類について定めがある必要があります。そもそも就業規則がないとか、就業規則に戒告、けん責の規定がない場合などは戒告、けん責はできないので注意が必要です。

また、就業規則は労働者に周知されていることが必要です。

フジ興産事件(最判平成15年10月10日、労判861号5頁)

「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。そして、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。」

就業規則の周知に関してはこちら

戒告、けん責処分に客観的合理的理由と社会的相当性が認められること

戒告、けん責処分が有効とされるためには、客観的合理的理由と社会的相当性が認められることが必要です(労働契約法15条)。

客観的合理的理由が認められるためには、懲戒事由該当性が認められることが必要です。懲戒事由は就業規則に定められるものですが、一般には経歴詐称、職務上の非違行為、業務命令違反、服務規律違反・不正、私生活上の非行などが懲戒事由として挙げられています。

懲戒処分は刑罰に類する制裁であるため、一度下された懲戒処分について後から懲戒事由を追加することはできません。

社会的相当性が認められるためには、懲戒事由と処分の重さが釣り合ってなければなりません。不当に重い処分は懲戒権の濫用として無効となります。

懲戒処分の手続を履践していること

懲戒処分は刑罰に類する制裁であるため、適正な手続が求められます。就業規則等で規定されている手続を経ないで行った懲戒処分は無効となります。

特に弁明の機会の付与は重要な手続であり、規定がなくても必要です。

就業規則等の規定に反し弁明の機会を与えなかった懲戒解雇を無効とした事例

「被告における従業員の処罰は、賞罰委員会の推薦または申告により行われるものとされ、同委員会は処罰すべき者について訓戒・譴責以外の処罰の程度方法等を審議して理事会に上申するが、この場合には審議を受ける本人に口頭または文書による弁明の機会を与えなければならないとされているところ(就業規則37条、賞罰委員会規則2条、8条)、本件懲戒解雇が賞罰委員会の推薦または申告により行われたことを認めるに足りる証拠はなく、また、被告は原告らに弁明の機会を与えていないから、本件懲戒解雇は上記手続規定に違反するものである。」「本件懲戒解雇には就業規則及び賞罰委員会規則を無視した重大な手続違反があるから、その余について判断するまでもなく、本件懲戒解雇は無効である。」(千代田学園(懲戒解雇事件)、東京高判平成16年6月16日、労判886号93頁、上告却下)

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藤澤昌隆
藤澤昌隆
弁護士・中小企業診断士(リーダーズ法律事務所代表、愛知県弁護士会所属)

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